top of page

​本研修事業の中核理論

​3つの理論と3つのかかわり

 学校現場では近年、​特別支援教育に関連する研修などは充実しているようですが、これ以外の愛着理論・心理発達理論・認知発達理論の理解は置き去りにされたままのようです。それらの理論を組み合わせて統合的な視点を持てると、不登校や起立性調節障害などとされるこどもとその親がかかえる心の悩みまでもが見えてきます。また、必要なかかわりは親面接なのか子面接なのか、または環境調整なのかの区別も割とはっきりできるようになります。

 しかし現場では、意外と闇雲にさまざまなかかわりがなされている感も否めず、実はこれが混乱のもとになっていることもあります。それを防ぐための入り口は「こどもの悩み3タイプ」を知ることで、この中核理論を一部ご紹介いたします。独自の視点やメソッドもあり、これまでに聞いたことがない内容もあるかもしれませんが、会得できると子や親の対応が格段と楽になるはずです。

​愛着理論

 愛着理論はJ.BowlbyがWHOの要請に応じた調査・研究から導き出された理論で、共同研究者であるM. Ainsworthが後に発表した「ストレンジシチュエーション法」も共に有名です。

 細かな説明は省くとして、子は2歳までに母親(主たる養育者)との間に愛着関係を築きます。が、ときに親側の問題でそれを築けないことがあります。このとき、子は愛着障害(反応性アタッチメント症/脱抑制型対人交流症)という心の傷を負います。

 小学校低学年くらいでは対人関係が不安定なために、注意欠如多動症や自閉スペクトラム症に見誤られることが珍しくありません。中学生くらいになると、人や社会を怖がる気持ちが嵩じてきて、不登校や引きこもりなど、情緒的な問題を呈することもあります。

 愛着関係が不全に終わる理由としてもっとも高頻度なのは、児童虐待です。それがために複雑性PTSDもかかえていることで慢性的な不眠や極端な対人恐怖があることも少なくありませんが、家庭の様子が見えていないと「行動が変」という理由で、やはり発達障害に間違われてしまうこともあります。本質的には心の傷が原因で人や社会を怖がっているので、特別支援教育だけでは不十分です。

​ 愛着関係とはどういうものなのか、それを築けなかった弊害としての愛着障害とは何かを学んでいきます。​これが見えるようになると、特別支援教育の限界と学校における「普通の親」を前提とした制度設計の不備も明らかになってきます。児童虐待が明らかな場合では、親を介して子をどうにかしようとするのは実質不可能で、子面接のみに注力する必要があります。

​心理発達理論

 人の心の成長として、今現在多くの人が納得しているのがE.H.Eriksonの理論です。本事業では、とくに第一反抗期と第二反抗期について理解を深めていきます。なぜなら、2〜3歳ごろの第一反抗期が成就できないと小学校へ入学してから対人関係で、第二反抗期に困難があるとやはり中学校で心の問題として悩みが顕在化することがあるからです。

 くどいですが近年は、こうした情緒的問題も発達障害だと思われている節があるので、現場ではかなりの誤解が広がっています。

​ 第一・第二反抗期があるのは母親(主たる養育者)との間に愛着関係が成立しているからです。子は親にわかって欲しくて、あれやこれやと行動や態度で訴えています。が、母親や父親側に夫婦問題や経済的困難、または原家族での問題があると、自分のことでいっぱいいっぱいになってしまって子に構ってやる余裕がなく、子がヘソを曲げてしまっている状態なのが「こじれた反抗期」です。

 それを理解できるようになると、先に述べた愛着障害との鑑別が学校現場でも概ね可能になってきます。と、なると、せねばならないのは親面接であることが明確になります。子はカウンセラーや教員にわかってほしいのではなくて親にわかってほしいと思っているからです。

​認知発達理論

 認知発達に関する理論はJ.Piagetが有名です。彼は認知発達の過程を4つの段階にわけて考え、さらに発達の順番は不可逆的であることを説きました。発達障害を理解するには、この定型的な認知発達過程とのズレを知る必要があります。

​ 真に発達障害であれば(近年は過剰診断が増えているので)、それは認知機能の障害で、かつ先天的なものです。本人の努力や親の子育ての仕方とはいっさい関係がありません。あるところ以上の認知機能の発達(質的な向上)はないというほどの意味ですので、出来ないところを伸ばそうとする支援は、あまり適さないのが実情です。が、意外にも現場は「がんばって、こどもを伸ばそう」としているので、これが原因で発達障害の子にストレスを与えてしまって、余計な「不適応行動」を招いてしまっていることもあります。本質的に必要なのは環境調整であることを学んでいきます。

​親面接か、子面接か、環境調整か

​ 上記3つの理論を理解できるようになると、せねばならないことが明確になります。悩みの構造と家族力動を踏まえると、私たちの経験では親面接(カウンセリング)・子面接(カウンセリング)・環境調整に、きれいにわけることができます。

 カウンセリングとケースワークそれぞれの適応範囲を、教員・スクールカウンセラー(SC)・スクールソーシャルワーカー(SSW)たちが理解するのは重要です。なぜなら、他職種連携や「チーム学校」が謳われている昨今ですが、連携してしまったがための弊害は意外と見落とされているからです。

​ 極論に聞こえるかもしれませんが、実は連携しないことの利益もあり、学校はこの双方を知ることも必要です。そのためには、先述の3つの理論を踏まえ、これに応じた3つのかかわり方も知るのが大切です。

 ちなみに筆者・植原は、これまでにSSWもSCも経験していますが、学校の先生とこどもとたちとの関係性には敵わないことをよく知っています。もっと踏み込んで言うと、学校の先生とくらべると、こどもやその親の悩みの解決には、SSWやSCはあまり役に立たないとさえ思っています。それは立場や学校にいる時間の違いもあるとは思うのですが、反対に先生たちがしっかりとした悩みに関する理論体系を知れば、まさに「鬼に金棒」。

 学校は教員によって構成されているわけですから、教員がこどもとその親を理解する事ができるようになれば、自ずと困った事例も減ってくるはずです。

​ それができるはずだし、そうなる可能性が学校にはあります。

​©︎2022-2026 汐見カウンセリングオフィス

bottom of page