「虐待サバイバー」にとっての回復とは?【東京 カウンセリング 愛着障害 複雑性PTSD うつ病 虐待の後遺症】
- 汐見カウンセリングオフィス
- 2023年4月27日
- 読了時間: 2分
更新日:7月30日
「虐待による心の傷は、一生涯にわたって抱えていかねばならない」——そんなふうに言われることがあるかもしれませんが、必ずしもそうではないと思います。
拙著『ルポ 虐待サバイバー』は、世の中に誤って広がってしまった虐待理解を正すために書いた節もあります。それはお読みいただければわかるとして、ここでは執筆秘話を少し記そうと思います。
執筆当時、私は福祉事務所に在職していました。いい方も多いのですが、中には思うように支援が進まないと、受給者を一括りにして「あの人、精神だから」と形容する職員もいました。学校など問題を起こしている子を「あの子、発達(障害)だから」と教員が口にするのと同じです。つまり、やんわりと、相手を否定しているのです。仮に「精神だから」「発達だから」と理解しているのであれば、それを理解しながら関わればいいのでは? と私は何度も思ったものです。遠回しに、思うように支援が進まない理由を相手のせいにしているようには感じませんか。
こういう空気感が嫌だったのですが、当時の私は自分の考えや気持ちを素直に上司などに相談して解決を図ろうと思えるほど器用ではありませんでした。うまくいかない原因は支援者にも多分にあるはずだ——そうした気持ちを執筆に代え、そこで自己表現したのだろうと思います。こんな私を支えてくれたのは、師匠である高橋和巳医師です。「あなたの教え、しっかりと受け継いでいますよ」という私なりのアンサー・ブック(アンサー・ソングならぬ)になっているかもしれません。
本書は、第18回・開高健ノンフィクション賞の最終候補になりました。執筆にも協力してくださった高橋医師は「受賞したら、フランス料理フルコースご馳走するよ」と言ってくださりましたが、惜しくも受賞ならず。しかし、多くの人たちに読んでもらえるよう刊行することができました。
もし、いま、虐待や家族のことで悩みを抱えているならば、読んでみてほしいと思っています。そして高橋医師をはじめとした理解力のある支援者が、もっと増えていくよう願っています。その一翼を本書が担えたら、幸いです。
著者 植原亮太